- テーマ:休耕田の再生モデルを考える~和歌山大学生と那智勝浦町太田地区住民の協働によるコメプロジェクト~
- 期間:2010年5月~2010年12月
- 場所:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町太田地区
- 実施主体:和歌山大学鈴木ゼミ?太田地おこし会
活動の様子
和歌山大学経済学部の鈴木裕範ゼミでは学生たちが、2010年に那智勝浦町太田地区で休耕田など水田2枚約1?6反16aを無償で借り受け、無農薬?減農薬を原則にコメ作りに挑戦しました。
那智勝浦町太田は、清流太田川の流域にある10の集落から成る地区で、人口は約1300人、65歳以上の人口はほとんどの地区で50%を超えています。古くからの稲作兼業農村地域ですが、農業就業者の高齢化や減反にともない耕作放棄地や休耕田が年々増加、庄地区では7割に達しており、農業だけではなくコミュニティの基盤が揺らいでいます。
そうしたなかで、「地域とともに学ぶ授業」に取り組んでいる鈴木ゼミでは、休耕田の再生モデルや農村と大学の協働について考えようと、地区の農家の有志で作る太田地おこし会の協力で「太田コメプロジェクト」を計画しました。
コメ作りには経済学部61期のゼミ生ら12人全員が参加し、5月14日に2枚の田んぼでコシヒカリの苗を植えました。6月25日には田の草取り、そして9月4日には稲刈り行ないましたが、学生らは、昼は農作業、夜は地元の人たちから農業をはじめ衣食住などの生活について聞き取りを行ないました。また、昼食は地元の女性たちが作ってくれたすしや煮物、漬物など太田の伝統食をご馳走になり、交流を深めました。
収穫は、田植えや稲刈りの時期が遅かったことからシカや害虫による被害もありましたが、約370kg(精米後事績)のコシヒカリを収穫しました。収穫した日の夜は、清流太田川の河原で盛大な手づくりの収穫祭を開き、収穫を喜ぶとともに交流会を開きました。
収穫した「太田米」はキロ500円で販売すること(精米費用は売上から支払う)とし、那智勝浦町の伊勢えび祭り(11月6日)、和歌山県地域自治体問題研究所主催の「農業の多面的な価値を考える」フォーラム(11月21日和歌山市)、和歌山大学南紀熊野サテライト5周年記念フォーラム(12月23日田辺市)などで学生がみずから販売にあたりました。
地域と大学の連携による「コメプロジェクト」をとおして、学生は「働くこと」の意味や食の生産の場である農村と農業が置かれている日本の状況を肌で理解する機会になり、また地区住民は若者との交流をとおして地域資源やその価値にあらためて目を向け、若い世代の農業にたいする考えなどが聞けて参考になった、と意義を認めています。
今回の「コメプロジェクト」では、ゼミ生がカメラを回しマイクの前で学生の太田での体験と交流をドキュメンタリー作品として制作、農村に生きる人たちと農業問題を見つめました。鈴木ゼミでは2011年も太田地区での活動に取り組み、地域の協働の仕組みづくりを探ることにしています。
ドキュメンタリ製作2010
「熊野太田 コメ作りに生きる~大学生が体験した農村、農業の現場~」