経済学部教員の著書を著者本人に解説してもらいました。なお、ここで解説してある著書は当研究所で貸出をおこなっています。
不安定と格差の住宅市場論 ―住宅市場のガバナンスのために―
- 大泉英次 著
- 白桃書房/2013年3月26日発行
人口減少、所得格差、金融グローバル化のなかで住宅市場はどう変化しているか。不安定と格差をキーワードに、イギリス、アメリカ、ドイツと日本の住宅市場を比較する。そして、住宅市場の不安定と格差の是正に向けて、日本の住宅政策の新しい課題を示す。
中世フランス会計史 ―13-14世紀会計帳簿の実証的研究―
- 三光寺由実子 著
- 同文舘出版/2011年8月17日発行、平成24年度日本会計史学会学会賞受賞
本書は、13-14世紀フランスの会計帳簿の断片に基づき、当時のフランス商人?銀行家が行った簿記を検討し、さらにそこから紡ぎ出せる中世フランス会計史が、中世ヨーロッパ会計史上でもつ意義について考究したものである。
本書のアプローチとしては、以下三つの特徴がある。第一に、13-14世紀フランスの会計帳簿の一次史料とその翻刻版に依拠し、会計史研究において未だ十分に検討がなされていない領域に対して、実証的分析を通じての究明を試みている。第二に、当時のフランスの商人?銀行家が、何を、どのように、そして何のために記帳したのかを、基盤にある地域?経営活動の個別性?特殊性に可能な限り照らし合わせて検討している。第三に、研究対象であるフランスの会計帳簿を、中世ヨーロッパ会計史上で位置づけるにあたり、中世ヨーロッパ会計史の把握の主軸を担い、ある程度の詳細が提示されてきたイタリア会計帳簿との比較の中で行っている。
本書は、フランス会計史の氷山の一角を述べたにすぎない。しかも、イタリアやその他近隣ヨーロッパ諸国に比較し、商人?銀行家が記した残存史料が稀少であるという点で、中世フランス会計史研究が困難であることは否めない。しかしながら、そうであっても今後を進化させる上で、分析対象を増やして検討することは不可避である。当時のフランス商人らが経営活動の中で、創意工夫し編み出した記帳実務は、乏しくも、埋もれた史料に光をあてることで、初めて明らかになるのである。
交通基本法時代の地域交通政策と持続可能な発展 ―過疎地域?地方小都市を中心に―
- 辻本勝久 著
- 白桃書房/2011年10月6日発行、2012年度 第10回法政大学「地域政策研究賞」(優秀賞)受賞
わが国では、交通由来の環境負荷の低減や、交通安全の確保、国と自治体による責務感ある施策展開と国民の積極的参加等を主たる内容とする「交通基本法案」が閣議決定された(平成23年3月)。本書は、過疎地域や地方小都市を主な対象として、「交通基本法時代」における交通政策のあり方を理論?実践の両面から研究したものである。なお、交通基本法案は本書刊行後の平成24年11月にみたび廃案となったが、内容を強化しての再提出に期待したい。
証券化と住宅金融 ―イギリスの経験―
- 簗田優 著
- 時潮社/2011年6月20日発行、平成24年度証券経済学会賞(優秀賞)受賞
現代資本主義のもとで新たに登場し、近年大変貌を遂げたリテール?バンキング(対個人信用)。なかでも住宅金融は、先進資本主義諸国を中心に著しい展開がみられた。しかしその背景では、金融機関のハイリスクな行動と顧客層の不安定化、そして証券化の過度な進展?多様化などが進展していた。
本書では、宇野発展段階論的な歴史的分析をもとに、イギリスを中心に世界的な証券化の進展と住宅金融の変貌を多面的に分析し、リーマン?ショック後の新潮流についても議論を展開した。
トクヴィルとデュルケーム ―社会学的人間観と生の意味
- 菊谷和宏 著
- 東信堂/2005年3月31日発行、同年第6回日本社会学史学会奨励賞受賞
本書は、現代社会学の基盤を成す「社会」と「人間」と「社会(科)学」という根本概念の成立過程を、19世紀前中半フランスの社会思想家アレクシス?ドゥ?トクヴィルと19世紀後半~20世紀初頭フランスの社会学創始者エミール?デュルケームの社会理論の深化に即して、また二月革命やドレフュス事件といった現実のフランス史との密接な連関において、鮮やかに描き出した著作である。そこでは近代社会学の成立史が示されるのみならず、この過程で見失われた社会的生の意味を現代社会において再び確立する為の方途も模索されている。それは「客観的な社会学」がその意に反して超越的な基盤に立脚せざるを得ない歴史的論理構造を暴きつつ、同時にこれを乗り越えうる新たな社会学のための新たな認識論的基盤を提供し、さらに科学的な社会認識の形成とともに生み出されてしまった「社会に生きるむなしさ」を超克する道を展望するものである。
1からの会計
- 谷武幸?桜井久勝 編著(第8章 負債と資本の会計 執筆:行待三輪)
- 発行=碩学舎、発売=中央経済社/2009年9月28日発行
「会計について学ぶ」と言えば、まず最初に浮かぶのが簿記で借方と貸方について覚え、仕訳を記録し、試算表から貸借対照表と損益計算書を作成し……「ややこしくてめんどくさい。機械的でおもしろくない。」という先入観から勉強をやめてしまう人も多いのではないでしょうか。とんでもない! 会計とはとても人間的な学問であることが本書を読めばわかります。
本書では、借方?貸方という言葉や簿記技術の説明は一切なく、貸借対照表も損益計算書も簡単な百分率計算書だけが記載されています。それでもダイエーやグリコ、任天堂や関西電力など皆さんが一度は聞いたことのある企業のケースでわかりやすく会計制度の役割や利益の構造が説明され、ただの書類と思っていた貸借対照表と損益計算書の項目や数字から経営者の考え方や行動がリアルに浮かび上がってきます。
本書で、まさに「会計が経営行動を写す鏡」であることを実感してみてはどうでしょうか?
人事制度の日米比較 ―成果主義とアメリカの現実―
- 石田光男?樋口純平 著
- ミネルヴァ書房/2009年10月25日発行
「成果主義」という言葉ほど、とかく意見や主張が先行しがちで実態についての理解がいい加減になされてきた概念もめずらしい。本書は、日米主要産業各社への詳しい事例調査にもとづいて、成果主義とその思想的発信源となったアメリカ型人事モデルの実態を明らかにしたものである。
中国の企業統治制度
- 李東浩 著
- 中央経済社/2008年12月24日発行
「よい経営をさせるための制度」としての企業統治は、中国でいかなる性格を持っているでしょうか。
先進国によく見られる「分散的な所有構造」でもなく、統治の対象も「経営者」だけではなく、 さらに、企業それ自体も自由法人ではなく国家政府、などの特有な状況下、どのように企業統治を理解できるのか、 実施できるのか?
2009年日本経営学会賞を受賞したこの一冊で、中国の企業統治事情をうまく理解する手掛かりです。
住宅政策からの再生 豊かな居住をめざして
- 塩崎賢明【編】(山田良治、大泉英次、足立基浩、金川めぐみ、他著)
- 日本経済評論社/2006年4月25日発行
日本の住宅問題の全体像から、母子家庭?団地?ホームレスなど個別の住宅のありかたまで、住宅にかかわる問題点を幅広く分析した一冊です。
耐震偽装問題などがあいつぐ日本の住宅の現状……どうしてこんなことになっているのだろうと気になっている方は、是非手にとってみてください。
経済学部の教員数名も執筆していますので、読んでみると先生が研究していることが少し見えてくるのではないでしょうか。
社会?地域貢献で世直し NPO?企業?大学?農村に新しい風
- 和歌山大学経済学部研究ユニット?岩田誠?鈴木裕範 編著
- 日経大阪PR/2005年3月1日発行
社会?地域貢献という視点で切っていくと、既存の構造を打ち破ろうとしている動きが様々な分野で始まっていることが伝わってくる。和歌山大学経済学部のグループでは、この現象に着目、あらゆる所でダイナミックに広がる現場を直視して、新たな社会を築くための課題にも踏み込んで取材、執筆する研究ユニットを結成、約1年間かけて、まとめたものである。
通信業財務分析の理論と実際
- 齊藤久美子 著集
- 三恵社/2004年12月6日発行
ここ数年和歌山大学経済学部齊藤ゼミナールでは3年生の6月半ばまでに簿記の学習、それ以降、12月頃までコンピューター演習も含めた財務分析の基礎学習、そしてその後、具体的に企業財務分析の比較研究を行ってきている。これらはおおむね今まで成功してきていると考えられる。そこで、今後の学習にあたって、将来のことも考え、最近の例を成果として残すことにした。本書は和歌山大学経済学部第53期の齊藤ゼミナール学生通信業分析班による研究成果を指導教員の齊藤久美子が加筆?修正したものである。
企業の興亡?街の盛衰 ~成否を決めるリーダーの条件~
- 岩田誠 著
- 日経大阪PR/2004年10月17日発行
学生時代、社会学を専攻したせいもあって「組織と人間」というテーマに、強い関心を持っていた。ここ10年はNPO(非営利組織)の台頭もあって、若いダイナミックなNPOという組織と、そこに使命感をもって打ち込む人々の生き方に共鳴し、論文を発表、本にもまとめた。本来、NPOは「政府の失敗」、「市場の失敗」からその機能を補う形で力を発揮、存在感を示してきた。しかし、「リーダーの在り方」、「プロ意識」、「評価の問題」、「コスト意識」、「行政との関係」など日本特有の組織の弱点を顕在化させてしまった。中でも、「リーダーの在り方」、すなわち「リーダーシップ」について考えていくと、営利企業のリーダー達の強靭で、合理的な振る舞いに、改めて感心させられる。和歌山大学での企業論に関する講義の集大成として、2004年度後期に「企業興亡論」を開講する事になり、本書は、講義における基本的枠組みを提供する。
サフォーク?システム フリーバンキング制か、中央銀行制か
- 大森琢磨 著
- 日本評論社/2004年10月15日発行
サフォーク?システムは、自由放任の下で成功を遂げた私的決済システムだったのか、中央銀行的な機能を担うべく登場した私的管理システムだったのか。対立する評価に分け入り、独自の理論的?歴史的解答を試みる。
県史30 和歌山県の歴史
- 小山靖憲?武内雅人?栄原永遠男?笠原正夫?高嶋雅明 著
- 山川出版社/2004年7月20日発行
現代に立って、過去の時代をふりかえり21世紀への指針をさぐりましょう。ロマンに満ちた郷土の歴史を4半世紀ぶりに全面書き下ろしました。
和歌山大学経済学部研究叢書20 李光地と徐乾学 康煕朝前期における党争
- 滝野邦雄 著
- 白桃書房/2004年6月26日発行
「聖祖実録」「康煕起居注」や李光地の残した「榕村語録続集」などを用いて、李光地と徐乾学との争いを中心にして、覇道への政策転換を始めた康煕帝の政治手腕を検討する。
文部科学省科学研究費補助金 特定領域研究『環太平洋の「消滅に瀕した言語」に関する緊急調査研究』の成果報告書4編
Lectures on Endangered Languages:4 -From Kyoto Conference 2001-
- 崎山理?遠藤史?渡辺己?笹間史子 編
Languages of the North Pacific Rim Volume 9
- 宮岡伯人?遠藤史 編
コリマ?ユカギール語例文付き語彙集
- 長崎郁?遠藤史 編
Lectures on Endangered Languages:5 -From Tokyo and Kyoto Conference 2002-
- 崎山理?遠藤史 編
- ELPR/2004年4月発行
Minerva text library 37 食と農の経済学 現代の食料?農業?農村を考える
- 橋本卓爾?大西敏夫?藤田武弘?内藤重之 編著
- ミネルヴァ書房/2004年3月30日発行
現代の農業?農村と食料をめぐる問題を、生産?流通?消費?政策など多角度からわかりやすく解説するとともに、今後の方向を展望する。本文の理解に役立つ興味深い最近のトピックをコラムで紹介する。
空間の社会経済学
- 山田良治?大泉英次 著
- 日本経済評論社/2003年7月25日発行
「空間」は「からっぽ」という意味ではありません。私たちが目の当たりにしている街であり、野山であり、住いです。本書は、そういう様々な具体的レベルの空間に経済学&社会研究の観点からアプローチしたものです。本学には「居住空間政策講座」というユニークな研究組織が設けられており、そこに所属する教員たちが協力して書き上げました。本書の内容と関連する授業科目も多いので、ぜひ手にとってみられることを薦めます。
学びの一歩 ―大学の主人公になる―
- 河音琢郎?和田寿博?上瀧真生?麻生潤 編
- 新日本出版社/2003年4月20日発行
「大学が面白くない」――そんな思いを持つ学生に、若い大学教師が送る《学び》のガイド。社会と人間をめぐって生き生き学ぶ学生の姿や、講義ではあまり聞けない学び方の数々から、新しいキャンパスライフが見えてきます。自分のやりたいこと、見つけるために一読ください!!
真価問われるNPO?NGO
- 岩田誠 著
- 日経大阪PR企画出版部/2002年4月4日発行
毎日の新聞、テレビ報道などマスメディアにおいて、NPO(非営利組織)、NGO(非政府組織)というキーワードが見られない日はないほどです。今まで日本社会を牽引してきた政府、企業が不祥事の続出などで国民に不信感が広がり、その影響力に衰えが目立っている中で、市民が主導するNPOの存在感が高まっています。福祉、環境、まちづくり、起業支援、国際貢献など様々な分野で、第一セクターの政府、第二セクターの民間企業では扱いにくい問題に対し、第三セクターであるNPOが小回りを効かし、ボランティア精神に満ちたメンバーらによって一歩一歩、解決へ動いている事例が増えてきています。この本の特徴は、ただNPOを誉めそやすだけではなく、冷静にNPO自身の組織、理念、マネジメントなどの問題点を見つめ直し、今後の課題を具体的に取材、インタビューを通じて浮き彫りにしていることです。皆さんのNPO入門編、さらにより深く学ぶためのヒントが見つかると確信しています。
和歌山大学経済学部研究叢書19 公権力による実力行使とその手続法的統制 ―ドイツ公法学における議論を対象として―
- 森口佳樹 著
- 白桃書房/1999年12月16日発行
日本においては、現行犯で逮捕する場合や住居の捜索を行う場合に、裁判官の発する令状が必要とされています。よく似た制度はどの国家においても採用されていますが、本書は、ドイツの制度について、その概要、適用領域、問題点について主として紹介?検討しているものです。手続による人権の保障について関心のある、憲法、行政法等を学ぶ学生諸氏には、日本とドイツの制度との比較をすることで、双方の制度の理解が深まることと思います。
土地?持家コンプレックス ―日本とイギリスの住宅問題―
- 山田良治 著
- 日本経済評論社/1996年8月10日発行
住宅や街づくりに関心のある方にお勧めです。「ウサギ小屋」と言われる小さな家、バラバラの街並み――「経済大国」の日本でなぜこのようなことが起きるのでしょうか? この本は、日本とイギリスを比較しながら、こうした問題へ解答を与えています。